とらふぐ料理で最も美しく代表される食べ方。薄く引くのはふぐの身質が固いため、厚すぎるとガムを噛んでいるようにねちゃ付き、噛み切れず、うまみはあるものの食味は半減する。そのために薄く引くのであるが、当館ではあまり薄すぎず切ったものを、たっぷりとお出しする。なお、関西で食される「ぶつ」というぶつ切りにした食し方は、養殖物に限ったことで、天然ものにおいては、いつまでも口の中でもごもごしなければならないという悲惨なことになる。
冬が盛りとなると恋しくなるてっちり。これは、冬に旬を迎えるとらふぐと野菜(白菜や白ネギなど)の出会いものという意味でもある。上質な真昆布からとった昆布だしで炊き上げたあらの身は、濁りのないうまみと、自家製ポン酢と相まって冬の味覚のだいご味といっても過言ではない。
とらふぐは身質が固く、水分が少ないため、焼くとどうしてもパサついてしまう。当館では、上身をてっさの3から5枚分の厚さにそぎ切りし、地元渥美大根のおろしと浅葱、もみじ卸を添えて特製ポン酢をかけ、強火で下身のみあぶったいわゆる「たたき」という形でご提供する。香ばしく焼けた下身と、生の上身がコリコリとした食感を保ちながら厚切りの旨みを堪能できる当館オリジナルの逸品である。ご常連は、てっさを、焼きふぐがたっぷり楽しめるよう変更してくれと、言われるほどである。
地元の八丁味噌に、ふぐの出汁を加え、渥美大根の風呂吹きと、上身を石焼にしたいわゆる田楽である。残った味噌に鍋の豆腐を入れ、アツアツの豆腐田楽として楽しむのもいい。
とらふぐは3種類の皮をもち、もっとも外側の皮を鬼皮(真皮ともいう・うろこが変化したとげがあるため、それを漉き取るため、熟練の腕が必要である)、上身についたものを身皮、鬼皮と身皮の間の粘膜部分をとうとうみと呼び、それぞれが別の食感を持ち、ゼラチンとともに楽しむことができる。
たっぷりと身のついたあら、特に「かえる」とよばれるカマの部分を中心に、上質のリノール油で軽く仕上げた。当館は醤油を加えたいわゆる竜田揚げ。香ばしい醤油の香りは食欲をそそり、唐揚げの中では別格の物だ。
三河地区は昔から醤油やみりんなど、醸造業が盛んな地域。その地元の溜り醤油と三河本みりん、徳島から取り寄せた手絞りの酢橘と橙を合わせ、豊饒な自家製ポン酢に仕上げた。また、上質の真昆布や浅葱など、こだわりの品がそろっている。